主要な発行メカニズム
ステーブルコインは発行メカニズムにより 3 種類に大別される。第一に法定通貨担保型 (USDT, USDC): 発行体が準備金として法定通貨や短期国債を保有し、1:1 で償還を約束する。第二に暗号資産担保型 (DAI): スマートコントラクトに ETH 等を過剰担保として預入れ、担保率が一定以下に低下すると清算される。第三にアルゴリズム型 (旧 UST): 担保なしに供給量調整でペッグを維持しようとするが、2022 年 5 月の UST 崩壊 (約 400 億ドル消失) により信頼が大きく毀損された。
トレーダーにとってのステーブルコインリスク
暗号資産デリバティブの証拠金は多くの場合 USDT 建てである。USDT がデペッグした場合、証拠金の実質価値が目減りし、理論上は利益が出ていても法定通貨換算で損失が発生する。2023 年 3 月の Silicon Valley Bank 破綻時には USDC が一時 $0.87 まで低下し、USDC 建てで証拠金を置いていたトレーダーは一時的に 13% の NAV 毀損に直面した。ステーブルコイン分散 (USDT + USDC + DAI) が実務上のリスク低減策となる。
規制動向と将来展望
各国の規制当局はステーブルコインを決済インフラとして規制する動きを強めている。EU の MiCA (Markets in Crypto-Assets Regulation) は 2024 年にステーブルコイン発行体への準備金要件を施行した。日本では 2023 年の資金決済法改正で電子決済手段として法的位置づけが明確化された。米国でも議会でステーブルコイン法案の審議が進む。規制強化は準備金の透明性を高める一方、中小発行体の淘汰と大手集中が進む可能性がある。
システムトレードにおける考慮点
システムトレードでステーブルコインに依存する場合、(1) デペッグ検知のモニタリング (主要ペアの 1.00 からの乖離を閾値監視)、(2) 証拠金を複数種のステーブルコインに分散、(3) 法定通貨 (USD) 建ての取引所併用、(4) 緊急時にステーブルコインから法定通貨へ退避するルーティングの設計、が実務上の検討課題となる。ステーブルコインは「安定している」という名前だが、完全な無リスク資産ではない点をリスクモデルに織り込む必要がある。