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結論 - オンチェーンデータは市場の構造を可視化するが予測力は限定的
オンチェーン分析とは、ブロックチェーン上に記録されたトランザクションデータを集計・分析し、市場参加者の行動パターンを推定する手法である。従来の金融市場では取引データの大部分が非公開だが、パブリックブロックチェーンではすべてのトランザクションが公開されている。この透明性を活用して、大口保有者 (クジラ) の動向、取引所への入出金フロー、長期保有者と短期投機家の損益状況などを観察できる。ただし、オンチェーンデータは「何が起きたか」を示すが「なぜ起きたか」や「次に何が起きるか」を直接教えてはくれない。
アクティブアドレス数
アクティブアドレス数は、一定期間内にトランザクションを送信または受信したユニークアドレスの数である。ネットワークの利用度を測る基本指標で、価格上昇局面ではアクティブアドレスが増加し、下落局面では減少する傾向がある。ただし、(1) 1 人が複数アドレスを使う場合にユーザー数を過大評価する、(2) 取引所の内部振替がノイズになる、(3) スパムトランザクション (エアドロップ等) で一時的に急増する、などの限界がある。Glassnode のデータによれば、BTC のアクティブアドレスは 2021 年 4 月のピーク時に約 110 万/日に達し、2022 年の弱気相場では約 60 万/日まで低下した。
SOPR (Spent Output Profit Ratio)
SOPR は「使用された UTXO の売却時価格 / 取得時価格」の比率で、市場全体の実現損益を示す。SOPR > 1 なら市場参加者は平均的に利益確定しており、SOPR < 1 なら損切りが優勢である。SOPR が 1 を下回る局面が長期化すると、損切り疲れ (capitulation) が進み底値形成のシグナルとされることがある。ただし SOPR は UTXO モデル (BTC) に特化した指標であり、アカウントモデル (ETH) には直接適用できない。また、取引所内部の移動や自己送金がノイズとして混入するため、フィルタリング (例: 1 時間以上保有された UTXO のみ集計する aSOPR) が必要になる。
Exchange Flow (取引所入出金)
取引所のウォレットアドレスへの入金 (Exchange Inflow) は売却意図、出金 (Exchange Outflow) は長期保有意図と解釈されることが多い。取引所の BTC 残高が減少トレンドにある場合、市場参加者が BTC を自己管理ウォレットに移しており、売り圧力が低下していると推定される。CryptoQuant のデータによれば、取引所の BTC 残高は 2020 年 3 月の約 320 万 BTC から 2025 年初頭には約 230 万 BTC まで減少した。ただし、(1) 取引所アドレスの特定が不完全 (新規アドレスの追跡遅れ)、(2) カストディサービスや ETF の保管が取引所外に見える、(3) DEX の台頭で CEX 残高だけでは全体像が見えない、などの限界がある。
MVRV (Market Value to Realized Value)
MVRV は「時価総額 / 実現時価総額」の比率である。実現時価総額 (Realized Cap) は各 UTXO を最後に移動した時点の価格で評価した合計で、市場全体の平均取得コストに近い概念である。MVRV > 1 なら市場全体が含み益、MVRV < 1 なら含み損の状態にある。歴史的に BTC の MVRV が 3.5 を超えると過熱圏、1.0 を下回ると底値圏とされてきた。2021 年 11 月のピーク時に MVRV は約 2.8、2022 年 11 月の FTX 破綻時には約 0.8 まで低下した。ただし、MVRV は長期的なサイクル指標であり、短期の売買タイミングには適さない。また、サンプル数が少なく (BTC の歴史は約 16 年)、過去のパターンが将来も再現する保証はない。
データソースとツール
オンチェーン分析の主要データプロバイダーとして、Glassnode (有料、包括的な指標セット)、CryptoQuant (取引所フロー特化)、Dune Analytics (カスタムクエリ、無料)、Nansen (ウォレットラベリング) などがある。無料で利用できる範囲も広く、Dune Analytics では SQL クエリで任意のオンチェーンデータを集計できる。<a href="https://www.amazon.co.jp/s?k=%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%88%86%E6%9E%90&tag=" target="_blank" rel="nofollow noopener noreferrer" class="amazon-inline-link">データ分析の関連書籍</a>で SQL や統計の基礎を学んでおくと、オンチェーンデータの独自分析に役立つ。
限界と注意事項
オンチェーン分析の根本的な限界として、(1) アドレスと人物の紐付けが不完全 (1 人が数百アドレスを使う場合がある)、(2) プライバシー技術 (ミキサー、CoinJoin) で追跡が困難になる、(3) Layer 2 やサイドチェーンのトランザクションはメインチェーンに反映されない、(4) 過去のパターンが将来も有効とは限らない (市場構造の変化)、(5) 指標の解釈が後付けになりやすい (バックテストでは有効に見えるが実運用では遅延する) がある。オンチェーンデータは市場の構造を理解する補助ツールであり、単独で投資判断の根拠にすべきではない。本記事は情報提供を目的としており、特定の投資判断を推奨するものではない。投資判断は各自の責任で行うこと。