理論

流動性プールの仕組み - AMM の数学と Impermanent Loss の正体

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DEX (分散型取引所) の流動性プールは従来のオーダーブックとは根本的に異なる仕組みで価格を決定します。Constant Product Formula の数学、流動性提供者が被る Impermanent Loss の計算式、集中流動性の設計思想を解説します。

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結論 - 流動性提供は手数料収入と IL のトレードオフ

AMM (Automated Market Maker) 型の DEX では、流動性提供者 (LP) がトークンペアをプールに預け、トレーダーはプールと直接取引する。LP は取引手数料を受け取る代わりに、価格変動時に Impermanent Loss (IL) を被る。IL は価格が元に戻れば解消されるが、一方向に動き続ければ実損失になる。流動性提供の損益は「手数料収入 - IL」で決まり、手数料が IL を上回る場合にのみ利益が出る。

Constant Product Formula の数学

Uniswap v2 に代表される基本的な AMM は x * y = k という不変量を維持する。x はトークン A の数量、y はトークン B の数量、k は定数である。トレーダーがトークン A を dx だけ投入すると、プールは x * y = k を維持するように dy = y - k/(x + dx) だけトークン B を払い出す。この式から導かれる実効価格は dy/dx であり、取引量が大きいほどスリッページ (価格への影響) が大きくなる。例えば ETH/USDC プールに 100 ETH と 200,000 USDC がある場合 (k = 20,000,000)、1 ETH を売ると約 1,980 USDC が得られる (理論価格 2,000 USDC に対し約 1% のスリッページ)。

Impermanent Loss の計算

IL は「プールに預けた場合の資産価値」と「単に保有し続けた場合の資産価値」の差である。価格比率が r 倍に変化した場合、IL = 2 * sqrt(r) / (1 + r) - 1 で計算される。具体例として、ETH/USDC プールに 1 ETH (2,000 USD) + 2,000 USDC = 4,000 USD を預けた場合、ETH が 2 倍 (4,000 USD) になると、プール内の資産は約 5,657 USD になるが、単に保有していれば 6,000 USD。差額の約 343 USD (5.7%) が IL である。ETH が 5 倍になれば IL は約 25.5% に達する。逆に ETH が半額になっても IL は約 5.7% で、上昇時と同じ比率になる (対称性)。IL は価格が元に戻れば解消されるが、戻らなければ実損失として確定する。

Uniswap v3 の集中流動性

Uniswap v3 (2021 年 5 月リリース) は、LP が流動性を提供する価格範囲を指定できる「集中流動性」を導入した。従来の v2 では 0 から無限大まで均等に流動性が分散していたが、v3 では例えば ETH/USDC で 1,800-2,200 USD の範囲にのみ流動性を集中させることができる。これにより、同じ資本で最大 4,000 倍の資本効率を実現できる (Uniswap v3 ホワイトペーパーによる)。ただし、価格が指定範囲を外れると流動性が非アクティブになり手数料収入がゼロになる上、IL も v2 より大きくなる。集中流動性は「レンジ内に価格が留まる」という予測が正しい場合にのみ有利であり、ボラティリティが高い局面ではリスクが増大する。

手数料収入と IL の損益分岐

LP の実質リターンは「累積手数料収入 - IL」で決まる。Uniswap v3 の主要プール (ETH/USDC 0.3% tier) では、2023 年の年間手数料 APR が約 10-30% で推移した一方、ETH の年間ボラティリティ (約 60-80%) を考慮すると IL は 5-15% 程度になることが多い。手数料が IL を上回る期間もあれば、急激な価格変動で IL が手数料を大幅に超える期間もある。Dune Analytics のオンチェーンデータによれば、Uniswap v3 の LP の約 50% が IL を考慮すると単純保有に劣後しているという分析がある。<a href="https://www.amazon.co.jp/s?k=DeFi&tag=" target="_blank" rel="nofollow noopener noreferrer" class="amazon-inline-link">DeFi の関連書籍</a>で基礎理論を学ぶことも有益である。

実務上の考慮点と注意事項

流動性提供を検討する際の実務的な論点として、(1) ペアの選択 (ステーブルコイン同士のペアは IL が極めて小さいが手数料率も低い)、(2) 手数料 tier の選択 (0.01%, 0.05%, 0.3%, 1% の 4 段階)、(3) 集中流動性の範囲設定 (狭いほど資本効率は高いがリバランス頻度が増える)、(4) ガス代 (ポジション調整のたびにガス代がかかるため、小額では手数料負けする)、(5) スマートコントラクトリスク (プロトコルのバグやハッキングによる資金喪失) がある。本記事は AMM の技術的仕組みを解説する情報提供を目的としており、流動性提供を推奨するものではない。DeFi プロトコルの利用は各自の責任で行うこと。

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